イスラム教とバビロニア神話

ソーシュールの構造の概念を継承してこれを神話研究に適用したのはレヴィ=ストロースであり、彼は例えばオイディプースの悲劇を、神話素のあいだの差異の構造と矛盾の体系として分析し、「神話的思考」(野生の思考)の存在を提唱した。神話の目的は、現実の矛盾を説明し解明するための構造的な論理モデルの提供にあるとした。オイディプースの神話の背後には様々な矛盾対立項があり、例えば、人は男女の結婚によって生じるという認識の一方で、人は土から生まれたという古代ギリシアの伝承の真理について、この矛盾を解決するための構造把握が神話であるとした。フロイトの無意識の発見から淵源したとも言える深層心理学の理論は、歴史的に現れる現象とは別に、時間を超えて普遍的に存在する構造の存在を教える。カール・ユングは、このような普遍的・無時間的な構造の作用として元型の概念を提唱した。ケレーニイとの共著『神話学入門』においては、童子神の深層心理学的な分析が行われるが、コレーや永遠の少年としてのエロースは太母(地母神)としてのデーメーテールなどとの関係で出現する元型であり、「再生の神話」と呼ばれるものが、無意識の構造より起源する自我の成立基盤であり、自我の完全性への志向を補完する普遍的な動的機構であるとした[115]。ユングの深層心理学(分析心理学)や元型概念に強く影響されたのが宗教学者のミルチア・エリアーデであり、彼は歴史に対し否定的な態度からその理論を出発させる。エリアーデは前近代社会(古代社会)と近代社会を対比させ、後者は歴史的・世俗的な現実のありようを重視し、人間の立ち位置を社会の歴史的位置付けと相関させて把握するとした。他方、前者の古代社会は、歴史とは無縁な社会であり、寧ろ歴史を意図的に軽視する社会である。人間は近代社会の歴史性のなかにある限り、存在根拠が定かでなく、絶え間ない不安にある存在である。

神々の父ゼウスは、真偽を知る智慧の女神メーティスを最初の妻とした。ゼウスはメーティスが妊娠したのを知るや、これを飲み込んだ。メーティスの智慧はこうしてゼウスのものとなり、メーティスよりゼウスの第一の娘アテーナーが生まれる。ゼウスの正妻は嫉妬深きヘーラーであるが、ヘーラーとのあいだには、アレース、ヘーパイストス、青春の女神ヘーベー、出産の女神エイレイテュイアが生まれる。大地の豊穣の大女神デーメーテールとのあいだには、冥府の女王ペルセポネーをもうけた。ゼウスはまた、ディオーネーとのあいだにアプロディーテーをもうける。アプロディーテーは、クロノスが切断した父ウーラノスの男根を海に投げ入れると、そのまわりに生じた泡より自然に生じたとの説もあるが[44]、オリュンポスの系譜上はゼウスの娘である[45]。ゼウスは、ティーターンの一族コイオスの娘レートーとのあいだにアポローンとアルテミス女神の姉弟の神をもうけた。更にティーターンであるアトラースの娘マイアとのあいだにヘルメースをもうけた。最後に、人間の娘セメレーと交わってディオニューソスをもうけた。アテーナーはメーティスの娘であるが、その誕生はゼウスの頭部から武装して出現したとされる。これに対抗して妃ヘーラーは、独力で息子ヘーパイストスを生んだともされる。

"テーセウスの生涯以上に華麗というか、夥しい人物が関係し、また様々な重要事件に参加するヘーラクレースの物語もまた英雄の結集する神話とも言える。彼が課された十二の難題の物語だけでも十分に複雑であるが、ヘーラクレースは「アルゴナウタイ」の一員でもある。更に、アポロドーロスによると、ゼウスの王権が確立した後に起こったとされるギガース(巨人)たちとの戦いに彼も参加している[84]。また、オルペウス教の断片的な資料では、原初にクロノス Khronos(時)別名ヘーラクレースが出現したという記述がある[85]。これが英雄ヘーラクレースかどうか分からないが、無関係とも言えない。"ギリシア中から英雄が集結して冒険に出発するという話は、イアーソーンを船長とするコルキスの金羊毛皮をめぐる「アルゴナウタイ」の物語がそうであり、ここではヘーラクレースやオルペウスなども参加している。また、アドラストスを総帥とする「テーバイ攻めの七将」の神話やその後日談でもある、七将の息子たちの活躍も、英雄たちが結集した物語である。メレアグロスの猪退治の伝承が潤色され、拡大した規模で語られるようになった「カリュドーンの猪狩り」の神話もまた、メレアグロスを中心に、カストールとポリュデウケースの兄弟、テーセウス、イアーソーン、ペーレウスとテラモーン、そしてアタランテーなども参加した英雄の結集物語である。

"珍しいことに、この記述には「方舟」が登場しない。 「バベルの塔」は翻訳に依る。いくつかの訳は都市に着いた人々、他はとりでを表す。""ホピ族の神話によれば、人々は創造主のソツクナングから繰り返し排除されたという。世界を破壊するのに、神は最初は火を、次には氷を使ったが、二度とも世界を作り直している間、まだ創造の掟に従っている人々を地下に隠して救った。しかし人々は三度目にも堕落して好戦的になった。そのため、ソツクナングは人々を蜘蛛女のところに導き、彼女が巨大な葦を切り落として人々を茎の空洞に避難させた。ソツクナングはそれから大洪水を起こし、人々は葦で水の上を漂った。 葦は小さな陸地にたどり着き、人々は葦から出て出発できるだけの食べ物を得た。 人々はカヌーで旅したが、それは内なる英知に導かれてのことだった。内なる英知は、頭頂にあるドアを通じてソツナングから伝えられるのである。彼らは北東に旅を続け、もう少し大きな島々を通り抜け、第四の世界にたどり着いた。 彼らが第四の世界にたどり着くと、島々は大洋の中に沈んだ。""カドー族の神話によれば、4人の怪物が力強く育って大きさが天に届くほどになった。そのとき、一人の男が中空の葦を植えるようにというお告げを聞いた。彼が実行すると、葦はとても早くにとても大きくなった。 男は、妻とすべての動物を一つがいずつ、葦に入れた。 洪水が起こり、葦の上部と怪物の頭以外は、すべてが水に飲み込まれた。 そのとき亀が怪物の足元を掘り、怪物を溺れ死なせた。 水が収まると、風が地球を乾かした。"

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