エノク書とイスラム教

一方イラン神話においては、アスラに対応するアフラがゾロアスター教の最高神アフラ・マズダーとなり、デーヴァにあたるダエーワが悪魔の地位に落とされている。『リグ・ヴェーダ』にはまた、若干の創造神話が見られる。創造神ブリハスパティ(Brahmanaspati)やヴィシュヴァカルマンによる万物創造を説く讃歌の他、創造神がヒラニヤ・ガルバ(黄金の胎児)として原初の水の中にはらまれて出現したとする説、神々が原人プルシャを犠牲として祭祀を行い世界を形成したという巨人解体神話などが説かれている。ブラーフマナ(祭儀書)文献とは、ヴェーダ本文であるサンヒター(本集)の注釈と祭儀の神学的意味を説明するもので、広義のヴェーダ文献の1つ。ここでは創造神プラジャーパティを最高神とし、彼による種々の創造神話が説かれている。しかし、しだいに世界の最高原理ブラフマンの重要性が認められるようになった。やがてブラフマンは人格神ブラフマーとして描かれ、彼による宇宙創造が説かれるようになった。

また、口承の場合は地域や時代によって細部に異同が多い。語られるたびに内容が微妙に違っていても、聞き手はそれを同一の物語として受け取っている点にも特徴がある。口承文芸は無文字時代から存在し、一般に、昔話・伝説・世間話などの民話、新語作成、新文句(新句法)、諺、謎、唱え言、童言葉、民謡、語り物などに分類される。このうち、昔話には、発端句(「むかし」を含むものが多い)と結句(「どっとはらい」など)に代表される決まり文句がある。また、固有名詞を示さず、描写も最小限度にとどめ、話の信憑性に関する責任を回避した形で語られる。時代や場所をはっきり示さず、登場人物の名前も「爺」「婆」や、出生・身体の特徴をもとにした普通名詞的である。「桃太郎」は、「桃から生まれた長男」の意味しか持たない。

北欧神話を解釈する上で重要なのは、キリスト教徒の手により「キリスト教と接触していない」時代について書かれた記述が含まれているという点である。『散文のエッダ』や『ヘイムスクリングラ』は、アイスランドがキリスト教化されてから200年以上たった13世紀に、スノッリ・ストゥルルソンによって書かれている。これにより、スノッリの作品に多くのエウヘメリズム思想が含まれる結果となった。事実上、すべてのサガ文学は比較的小さく遠い島々のアイスランドから来たものであり、宗教的に寛容な風土ではあったものの、スノッリの思想は基本的にキリスト教の観点によって導かれている。ヘイムスクリングラはこの論点に興味深い見識を備える作品である。スノッリはオーディンを、魔法の力を得、スウェーデンに住む、不死ではないアジア大陸の指導者とし、死んで半神となる人物として登場させた。オーディンの神性を弱めて描いたスノッリはその後、スウェーデン王のアウンが自身の寿命を延ばすために、オーディンと協定を結ぶ話を創る。後にヘイムスクリングラにおいてスノッリは、作品中のオーラヴ2世がスカンディナヴィアの人々を容赦なくキリスト教へ改宗させたように、どのようにしてキリスト教へ改宗するかについて詳述した。市民戦争を避けるため、アイスランド議会はキリスト教に票を投じるが、キリスト教から見ての異教崇拝を、幾年もの間自宅での隠遁の信仰で耐え忍んだ。一方スウェーデンは、11世紀に一連の市民戦争が勃発し、ウプサラの神殿の炎上で終結する。イギリスでは、キリスト教化がより早く散発的に行われ、稀に軍隊も用いられた。弾圧による改宗は、北欧の神々が崇拝されていた地域全体でばらばらに起っている。しかし、改宗は急に起こりはしなかった。キリスト教の聖職者達は、北欧の神々が悪魔であると全力を挙げて大衆に教え込んだのだが、その成功は限られたものとなり、ほとんどのスカンディナヴィアにおける国民精神の中では、そうした神々が悪魔に変わることは決してなかった。

3人の神々は自分たちが十分に強大な力を持っていると感じ、ユミルを殺害する。ユミルの血は世界に溢れ、2人を除くすべての巨人を溺死させた。しかし巨人は再び数を増やし続け、すぐにユミルが死ぬ前の人数まで達した。その後神々は死んだユミルの屍体で大地を創り、彼の血液で海・川・湖を、骨で石・脳で雲を、そして頭蓋骨で天空をそれぞれ創りだした。更にムスペルヘイムの火花は、舞い上がり星となった。"ある日3人の神々は歩いていると、2つの木の幹を見つけ、木を人間の形へ変形させた。オーディンはこれらに生命を、ヴィリは精神を、そしてヴェーは視覚と聞く能力・話す能力を与えた。神々はこれらをアスクとエムブラと名づけ、彼らのために地上の中心に王国を創り、そこを囲むユミルのまつ毛で造られた巨大な塀で、巨人を神々の住む場所から遠ざけた。巫女はユグドラシルや3柱のノルン(運命の女神[3])の説明に進む。巫女はその後アース神族とヴァン神族の戦争と、オーディンの息子でロキ以外の万人に愛されたというバルドルの殺害[4]について特徴を述べる。この後、巫女は未来への言及に注意を向ける。

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