関連する諺とゲルマン
海洋のニュンペーはむしろ女神に近い。1)オーケアニデス(単数:オーケアニス)は、オーケアノスがその姉妹テーテュースのあいだにもうけた娘たちで、3000人、つまり無数にいるとされる。この二柱の神からはまた、すべての河川の神が息子として生まれており、河川の神とオーケアニスたちは姉弟・兄妹の関係にあることになる。冥府の河であるステュクスや、ケイローンの母となったピリュラー、アトラース、プロメーテウス兄弟の母であるクリュメネーなどが知られる。2)ネーレーイデス(単数:ネーレーイス)は、ネーレウスとオーケアノスの娘ドーリスのあいだの娘で、50人いるとも、100人いるともされる。アンピトリーテー、テティス、ガラティア、カリュプソーなどが知られる。ニュンペーは自然界にいる女性の精霊で、なかには神々と等しい者もいた。他方、地上の世界にはニュンペーと対になっているとも言える男性の精霊が存在した。彼らはその姿が、人間とはいささか異なる場合があった。彼らは山野の精霊で、1)パーン(別名アイギパーン、「山羊の姿のパーン」の意)、2)ケンタウロス、3)シーレーノス、4)サテュロスなどがある。彼らは、上半身は人間の姿に近いが、下半身が馬や山羊であったり、額に角があったりする。パーンは別格とも言え、ヘルメース神とドリュオプスの娘ドリュオペーのあいだの子で、オリュンポスの神の一員でもある。ただしパーンが誰の子かということについては諸説がある。シューリンクス笛を好んだが好色でもあった。ケンタウロスは半人半馬の姿で、下半身は馬であった。乱暴で粗野であるが、ケイローンだけは別格で医術に長け、また不死であった。シーレーノスとサテュロスは同じ種族と考えられ、前者は馬に似て年長であり、後者は山羊に似ていた。粗野で好色で、ニュンペーたちと戯れ暴れ回ることが多々あった[60]。
他方、カドモスの姉妹にエウローペーがあり、彼女はクレーテー王アステリオスの妻であるが、ゼウスが彼女を愛しミーノースが生まれる。ミーノースの幾人かの息子と娘のなかで、カトレウスは娘を通じてアガメムノーンの祖父に当たり、同様に、彼はパラメーデースの祖父である。カトレウスの孫には他にイードメネウスがいる。ミーノースの娘アリアドネーは、本来人間ではなく女神とも考えられるが、ディオニューソスの妻となってオイノピオーン等の子をもうけた。クレーテーの迷宮へと入って行ったテーセウスは、アテーナイ王アイゲウスの息子とも、ポセイドーンの息子ともされるが、ミーノースの娘パイドラーを妻とした。アガメムノーンを総帥とするアカイア勢(古代ギリシア人)に侵攻され、十年の戦争の後、陥落したトロイアは、トロイア戦争の舞台として名高い。小アジア西端に位置するこの都城の支配者は、ゼウスを祖とするダルダノスの子孫である。彼はトロイア市を創建し、キュベレー崇拝をプリュギアに導いたとされる。ダルダノスの孫がトロースで、彼がトロイアの名祖である。トロースには三人の息子があり、イーロス、アッサラコス、ガニュメーデースである。ガニュメーデースは美少年中の美少年と言われ、ゼウスがこれを攫ってオリュンポスの酒盃捧持者とした。イーロスはラーオメドーンの父で、後の老トロイア王プリアモスの祖父である。英雄ヘクトール、パリス(アレクサンドロス)はプリアモスの息子で、予言で名高いカッサンドラーはその娘である。またヘクトールの妻アンドロマケーは、トロイア陥落後、アキレウスの息子ネオプトレモスの奴隷とされ、彼の子を生む。
陸地のニュンペーとしては次のようなものがある。1)メリアデス(単数:メリアース)はもっとも古くからいるニュンペーで、ウーラノスの子孫ともされる。トネリコの樹の精霊である。2)オレイアデス(単数:オレイアース)は山のニュンペーである。3)アルセイデス(単数:アルセイス)は森や林のニュンペーである。4)ドリュアデス(単数:ドリュアース)は樹木に宿るニュンペーである。5)ナパイアイ(単数:ナパイアー)は山間の谷間に住むニュンペーである。6)ナーイアデス(単数:ナーイアス)は淡水の泉や河のニュンペーである。これらのニュンペーは陸地に住処を持つ者たちである。一方、海洋には、オーケアノスの娘たちや、ネーレウスの娘たちが多数おり、彼女らは美しい娘で、ときに、ニュンペーではなく女神に近い存在であることがある。海洋のニュンペーはむしろ女神に近い。1)オーケアニデス(単数:オーケアニス)は、オーケアノスがその姉妹テーテュースのあいだにもうけた娘たちで、3000人、つまり無数にいるとされる。この二柱の神からはまた、すべての河川の神が息子として生まれており、河川の神とオーケアニスたちは姉弟・兄妹の関係にあることになる。冥府の河であるステュクスや、ケイローンの母となったピリュラー、アトラース、プロメーテウス兄弟の母であるクリュメネーなどが知られる。2)ネーレーイデス(単数:ネーレーイス)は、ネーレウスとオーケアノスの娘ドーリスのあいだの娘で、50人いるとも、100人いるともされる。アンピトリーテー、テティス、ガラティア、カリュプソーなどが知られる。
ここで崇拝される英雄は「力に満ちる死者」であり、その儀礼は、親族の死者への儀礼と、神々への儀礼の中間程度に位置していた[71]。祀られる英雄ごとで様々な解釈があったが、祭儀におけるヘーロースは、都市共同体や個人を病や危機から救済し恩恵を齎した者として理解された。このような崇拝の対象が叙事詩に登場する英雄に比定された。ときが経るにつれ、ヘーロースの範型に該当すると判断された人物、すなわち神への祭祀を創始した者や、都市の創立者などには、神託に基づいて英雄たる栄誉が授与され、彼らは「英雄」と見なされた[72]。ギリシアの英雄は半神とも称されるが、多くが神と人間のあいだに生まれた息子で、半分は死すべき人、半分は不死なる神の血を引く。このような英雄は、「力ある死者」のなかでも神に近い崇拝を受けていた者たちで、ヘーラクレースの場合は、英雄の域を超えて神として崇拝された。英雄は、都市の創立者として子孫を守護し、またときに、敵対する者の子孫に末代まで続く呪いをかけた[73]。死して勲を残す英雄は、守護と呪いの形で、その死後に強い力を発揮した者でもある[74]。英雄は古代ギリシアの名家の始祖であり、祭儀や都市の創立者であり名祖であるが、その多くはゼウスの息子である。ゼウスはニュンペーや人間の娘と交わり、数多くの英雄の父となった。