アイルランドと童話とメルヘン
一方で、武勲を称賛し、王侯貴族の豪勢な生活や栄誉、詩や音楽や彫刻などの芸術の高みに、恵まれた人は立ち得る。しかし庶民の生活は厳しいものであり、そこで人間としていかに生きるか、ヘーシオドスは神話に託して、人間のありようの諸相をうたっていると言える。"ギリシア神話においては、ヘーシオドスが語る五つの時代の最後の時代、すなわち現在である「鉄の時代」の前に、「英雄の時代」があったとされる。英雄とは、古代ギリシア語でヘーロース(heeroos、 ηρως)と呼ぶが、この言葉の原義は「守護者・防衛者」である。しかしホメーロスでは、君公とか殿の意味で支配者・貴族・主人について普通に使用されていた[67] [68]。"神話学者キャンベルは、英雄神話を神話の基幹に置いたが、彼の描く英雄とは、危険を犯して超自然的領域に分け入り勝利し、人々に恩恵を授ける力(force)を獲得した者である[69]。古代ギリシアの英雄は、守護者の原義を持つことからも分かる通り、超自然の世界に分け入って「力」を獲得する者ではない。文献や考古学によれば、ミュケーナイ時代には存在しなかった「英雄崇拝」が、ギリシアの暗黒時代[70]を通じて、ホメーロスの頃に出現する。
また、数多くの文学者や詩人が、作品の題材や形容・修飾にギリシア神話の逸話や場面を利用することで、作品に重層性を与えている。ジョン・ミルトンは『失楽園』、『コウマス』において修飾引用を行っている。スペンサーの『妖精女王』でギリシア神話に言及する。ロマン派の詩人たちは、しばしばギリシア神話からインスピレーションを得ている。『チャイルド・ハロルド』におけるロード・バイロン、『エンデュミオーン』、『プシューケーに寄せるオード』におけるジョン・キーツなどである。ヘルダリーンは『ヒュペーリオン』、『エンペドクレス』を書き、ライナー・マリア・リルケは『オルフォイスに献げるゾネット』連作を造った。オルペウスもまた詩人に霊感を与え、ジャン・コクトーは映画を制作している。ジェイムズ・ジョイスの作品もまたギリシア神話の影響を受けている。"音楽の分野でも、ギリシア神話を題材やモチーフとしたものは多数に昇る。グルックには、『パリスとヘレナ』、『オーリードのイフィジェニー』があり、ベルリオーズは『トロイアの人々』を作曲している。モーツァルトには、アイネイアースの子を主題とした 『アルバのアスカーニオ』があり、また『イドメネオ』がある。リヒャルト・シュトラウスは 『エレクトラ』を作曲している。オペラ作品として、グルックには、オウィディウスの作品を原作とした『エコーとナルシス』があり、リヒャルト・シュトラウスは、エウリーピデースの悲劇を元にした『エジプトのヘレナ』、『ナクソス島のアリアドネ』、『ダフネ』がある。カール・オルフは『アンティゴネー』を作曲している。"ギリシア神話の英雄あるいは出来事を映画化した作品は欧米において非常に多数に昇る。トロイア戦争を主題にした映画作品は数多く制作されており、ヘーラクレースを主人公とする作品もまた多くある。アルゴナウタイ、テーセウス(主にクレータの迷宮を舞台として)の物語、テーバイ攻めの七将などの話が映画化されている。ギリシア悲劇も映画となっているものが多い。
現代(Nahui-Ollin)は第5の時代(あるいは5度目の創世)であり、最も小さき神ナナファトル(Nanahuatl)の犠牲によって滅失を逃れた。この最も控え目な神はその後、太陽に変じたという。この神話はテオティワカンと関連し、アステカ人が到着した時にはそこはすでに破壊され放棄されていた。他の神話では、地球は双子の神テスカトリポカとケツァルコアトルによって創られたとされている。テスカトリポカは世界を創造する最中に自らの足を失った。そのためこの神の全ての似姿は、足のない姿、あるいは骨をさらされた形で表される。ケツァルコアトルは「白いテスカトリポカ」と呼ばれることもある。邪神の名前である「Cthulhu」は、本来人間には発音不能な音を表記したものであり、クトゥルフやクトゥルーなどはあくまで便宜上の読みとされているため、クトゥルー神話、ク・リトル・リトル神話、クルウルウ神話とも呼ばれる。ラヴクラフトから彼の遺著管理者に指名されたロバート・バーロウによると、ラヴクラフト自身はKoot-u-lewと発音していたそうである。またラヴクラフトの書簡には、発音方法が記されたものがある。それによると『Cluh-luhのように音節を分け、舌の先を口蓋にしっかりとつけたまま、唸るように吠えるように、あるいは咳をするようにその音節を出せばいい[1]』と書かれている。
古代スカンジナビアの神話では、ベルゲルミルはスルードゲルミルの息子である。彼と妻は、ベルゲルミルの祖父ユミルの血の洪水(オーディンと彼の兄弟のヴィリとヴェーによる虐殺)を生き残った、最後の霜の巨人である。彼らは中が空洞になった木の幹に潜り込み生き残って、新たな霜の巨人を生み出した。"神話学者の Brian Branston は、この神話と、アングロサクソンの叙事詩である『ベオウルフ』に述べられた事件との共通点に注目した。それらは伝統的に『聖書』の洪水と関連しており、したがって、アングロサクソンの伝統と同様、広くゲルマン民族の神話に一致する事件があったと思われる。""アイルランドの偽史書『アイルランド来寇の書』(Lebor Gabála Érenn)には不確かなところがあるが、アイルランドの最初の居住者はノアの孫娘ケスィル(Cesair)に導かれて、島にたどり着いた後40日の洪水によって死んだ一人を除いて全員だった。 その後、パルソローン(Partholón)とネウェズ(Nemed)の人々が島にたどり着いた後、別の洪水が起こって30人を除いて全員の居住者が死んだ。30人は世界中に四散した。"